みなさん、こんにちは。
RISE & WIN Brewing Co.(以下、RISE & WIN)の友成です。
RISE & WINは7月より、10周年を記念したスペシャルビール「reRise(リライズ)IPA 2025」を販売しています。
今回のコラム企画では、RISE & WIN代表の田中達也にこのビールに込めた想いや誕生の裏側を伺いました。
前編では、「reRise」に着目し、その取り組みや背景にあるストーリーについてご紹介しています。
「reRise」とは?
友成:ではさっそくですが、
今回、RISE & WIN10周年を記念してリリースされた『reRise IPA 2025』について、ネーミングにもなっている「reRise」とは何かをあらためて教えてください。
田中:はい、そもそも我々クラフトビールを造るブルワリーって、醸造過程で色々な副産物が出ているんだけど、その中でも多く出ているのが麦芽の搾りかす(以下、麦芽かす)なんです。麦芽かすは、通常は事業者なら産廃で廃棄することが多いけれど、地域のブルワリーだと、農家や牧場などで引き取ってもらうところもあります。
カミカツビールも当初は、近隣の農家さんの堆肥用に、また養鶏農家さんの飼料用として引き取ってもらっていましたが、高齢化もあって農家さんからは「いつまでも引き受けることができない」と言われました。それで、「自分たちで出してしまうものは、自分たちで最後まで責任をもってやらないといけないんだ」と感じて、何かできることはないかと考えました。
とはいえ、一方でブルワーたちが通常業務に加え、自分たちで堆肥化するには負担が大きすぎるということで、負担をかけずに自分たちで循環させる仕組みを探していました。その時、偶然にも群馬のメーカーさんが持っている技術と巡り合い、この技術をもとに我々の独自のやり方と循環の仕組みをつくることになったのが「reRise」の始まりです。
▼麦汁を絞り出した後に残る麦芽かす
▼装置の中に麦芽かすを入れ、微生物の力で細かく分解していく
▼生成された液肥を土壌活性剤として田畑で活用。この仕組みにより、収穫できた大麦が「reRise麦」
友成:「reRise」って、結局のところ概念みたいなものなのでしょうか?
田中:最初は、「麦芽かすを液肥化する装置のこと=reRise」と考えていたけれど、取り組んでいけばいくほど、やっぱり循環の仕組みって色んなところに必要なんだな、と感じはじめました。出てくるごみを循環させるということもそうだけど、暮らしそのものも循環していくし、そうすることで継続的に豊かな暮らしを営めるようになる。
そう考えていった結果、麦芽の循環だけにとどまらず、今まで不要になっていたものにもう一度命を吹き込み新たな価値を生み出すという意味で、我々が目指す資源循環の世界観そのものを「reRise」と呼ぶようになりました。


友成:実際に取り組んでいるなかで、自分たちのなかでも「reRise」の可能性が広がっていったということですね。
reRiseへの挑戦
友成:reRiseの取り組みは今年で5年目になりますが、大変だったことや周りの反応はどうでしたか?
田中:まず大変だったのは、微生物の力で発酵させているので、何でもかんでもうまくできるわけではないところ。やっぱりなかには処理が苦手なものもあって、そもそも麦芽かすはそのほとんどが繊維質なので分解されづらい。そこで、どういうふうにすればうまく処理できるかということを考える必要がありました。
また、生成されたものを肥料として使うためにはどうすればいいかという壁にぶち当たりました。液肥は近隣の農家さんに使ってもらっているけれど、はじめは「これがいい理由」をきちんと説明するには、科学的な根拠が必要でした。
液肥と呼んでいますが、実際には微生物の力で土壌を活性化させる活性剤としての役割をするので、慣行農法とは異なるやり方に理解を得たうえで使ってもらうことも大変でした。
今はデータもとれてきましたが、これらがスムーズにできたのは、RISE & WINの運営会社となる母体が衛生検査会社としてバイオサイエンスに強いバックグラウンドを持っていたことが非常に大きいです。
今後の課題としては、協力農家さんを増やしながらこのreRiseの世界観を広げていくことです。上勝町では、近隣の農家さんが協力してくださっていますが液肥は次々とできるので、それを使ってもらえる協力者を増やしていく必要があります。ここに対してもっと理解を得られるよう、これからも頑張っていかなければならないと感じています。
友成:ありがとうございます。確かに、自社で栽培した農作物の検査ができると成果を科学的に測ることができたり、間違っていたらその改善もすぐにできたりするので、スピーディーかつ柔軟に対応できそうですね。
田中:やっぱりやっているといろいろと新しい課題がでてくるので…身近にすぐに相談できる存在があるという点は我々の強みだと実感しています。
友成:reRiseの取り組みに対して、周りの評価や反応はどうですか?
田中:ここ最近は、reRiseの資源循環の仕組みを取り入れたいという相談が増えてきています。世の中的にも、事業者の中でできるだけリサイクルはされるようになってきているけれど、どうしても減らすことができない生ごみの課題があるということを知りました。また、環境問題への取り組みは真剣に取り組まないといけないけれど、一方で数字やレポートを並べただけでは、成果や取り組みが十分に伝わらないという、もどかしさみたいなものも感じました。
だからこそ、我々ブルワリーのこういった身近な存在であるクラフトビールを通じた環境への取り組みが着目され、お声がけいただけているのだと思います。クラフトビールが気軽さを表現できる点の魅力は大きいです。自分たちが行ったことが、クラフトビールという形ある嬉しいものになって返ってくると、取り組んだ成果の実感も沸きますよね。
友成:ただ環境問題に取り組むだけでなく、誰もが自然と参加者になれる仕組みづくりをクラフトビールがしっかりと担っているのですね。
前編はここまでとなります。いかがでしたでしょうか?
後編はいよいよ『reRise IPA 2025』とRISE & WINのこれからについてご紹介していきます。
reRise IPA 2025
『reRise IPA 2025』は、パッションフルーツや柑橘を思わせる、トロピカルで奥行きのある香りと通常のIPAよりもドライな飲み口が特徴的です。
淡色で雑味の少ない「reRise麦」の性質を活かし、暑い季節でも飲み疲れしないドライでキレのある味わいに仕上げつつも、IPAならではのフレッシュさとジューシーさを表現し、しっかりとした飲みごたえも兼ね備えています。
田中達也(たなか たつや)
徳島県出身。食品安全のための衛生検査・分析、コンサルティング事業等を手がける。2011年~上勝町での事業に参入し、RISE & WIN(2015)、上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY(2020)の設立・運営をはじめとし、ゼロ・ウェイストタウンとしてのまちづくりや研修事業、サステナブルソリューション”reRise”の開発等、幅広くソーシャルビジネスを展開する。
RISE & WIN Brewing Co.
日本ではじめてゼロ・ウェイスト宣言を行った、徳島県上勝町(※)に拠点を構えるブルワリー。
美味しいクラフトビールを仲間とカジュアルに楽しむ、ただそれだけで美しい環境を守り、社会課題を知る小さなきっかけとなる。RISE & WINはそんな心地良い循環を目指し、ビールを「ゼロ・ウェイスト活動を自分事化するための手段」と捉え、上勝の暮らしや体験に根ざした魅力を発信しています。
“JUST DRINK KAMIKATZ BEER”
美味しいビールを楽しむだけで 「環境にちょっと良いコト」に繋がっている
※上勝町は2003年よりごみの再利用・再資源化に力を入れ、現在では日本屈指のリサイクル率80%以上を実現するに至りました。